「AIエージェントを導入すれば、業務は自動的に効率化される」――そう考えて導入に踏み切ったものの、期待したほどの成果が出ない。問題の多くは、AIエージェントの性能ではなく、「どの業務に導入するか」の見極めが不十分だったことに起因しています。
本記事では、プロセスマイニングを使って「自動化すべきプロセス」を特定し、導入の成果を最大化する方法を解説します。
AIエージェントを「とりあえず導入」しても成果が出ない理由
「自動化しやすそうな業務」と「自動化すべき業務」は違う
とりあえず導入がうまくいかない最大の原因は、「自動化しやすそうな業務」と「自動化して効果が大きい業務」を混同してしまうことにあります。
たとえば社内の経費精算はシンプルに見えますが、部署ごとに申請ルールが異なったり、例外パターンが入り組んでいたりします。こうした業務にAIをそのまま入れても手作業が減りません。逆に、地味に見えても処理件数が多く、パターンが比較的単純な業務のほうが、自動化の投資対効果(ROI)は高い場合があります。
現場の声だけで対象を決めるリスク
導入対象の選定を現場の要望に任せると、声の大きい部署が優先されやすく、本当に効果が大きい業務が後回しになるリスクがあります。また、「この業務を自動化してほしい」という要望の裏に、プロセスそのものの見直しが先に必要なケースが隠れていることもあります。こうした判断ミスを防ぐために必要なのが、導入前の客観的な業務分析です。
導入前にプロセスマイニングで現状を定量把握する意義
子ページ①で解説した通り、プロセスマイニングはヒアリングでは見えない業務の実態をデータで可視化する手法です。導入前に実施することで、「この承認ステップの平均所要時間は3.2日で、全体のリードタイムの42%を占めている」といった数値に基づく判断が可能になり、感覚的な評価を事実に置き換えることができます。
【ガバナンス視点】客観的データによる優先順位づけと真正性の担保
これらの評価を行う際、NADJAでは基幹システムから直接ログを抽出・連携するアプローチを採用しています。担当者が手作業でCSVを書き出すプロセスを省くことで、データへの人為的な介入や改ざんリスクを排除します。システムが自動記録した「変更不可な事実(Immutable Data)」に基づくため、監査法人や経営層に対しても、極めて透明性と説得力の高い投資判断理由を提示することができます。
自動化対象の優先順位をデータで決めるフレームワーク
プロセスマイニングで業務の実態が可視化できたら、「どの業務から自動化に着手するか」の優先順位を決める段階です。勘や社内政治ではなく、データに基づいた判断が不可欠です。
4つの評価軸で候補を絞り込む
- ①定型率:最も多い処理パターン(ハッピーパス)が全体に占める割合。70%以上であれば有力候補です。
- ②処理ボリューム:月間の処理件数。定型率との掛け合わせで削減できる総工数を見積もります。
- ③滞留時間:人が介在する承認待ちや手動の振り分け作業など、時間が浪費されているステップを特定します。
- ④エラー・差し戻し率:手戻りが多いステップを特定し、AIによる事前チェックによる改善効果を試算します。
「効果が大きい × 実現しやすい」のマトリクスで判断する
4つの軸で各業務を評価したら、「効果の大きさ」と「実現の容易さ」の2軸でマトリクスを作成します。効果が大きく実現しやすい業務が最初に着手すべきターゲットです。まず成果を出すことで社内の信頼を得て、次のフェーズでより複雑な業務の自動化に進めます。
業務プロセスの複雑度・例外パターンを事前に把握する
例外処理の割合が自動化の成否を分ける
AIエージェントの導入において、最も見落とされやすく、かつ最も影響が大きい要素が「例外処理の実態」です。
業務マニュアルにはきれいな流れが書かれていても、実データを分析するとマニュアル通りに進む案件は一部に過ぎないことが珍しくありません。例外パターンの存在を事前に把握できていなければ、「自動化率80%を想定していたのに実際には50%しかできなかった」という事態に陥ります。
プロセスの「バリアント分析」で複雑度を見極める
プロセスマイニングの「バリアント分析」を使えば、処理パターンを網羅的に洗い出し、上位パターンでカバーしきれない例外パターンの割合を定量的に読み取れます。

まず上位パターンの自動化に集中し、例外パターンは段階的に対応する設計が合理的です。

属人化のリスクも事前に可視化する
プロセスマイニングは、特定の担当者に業務が集中していないかも明らかにします。属人化が進んだプロセスは、自動化以前にナレッジの共有やプロセスの標準化が必要です。「導入前にプロセスを整理すべき業務」と「現状のままでも自動化効果が見込める業務」を事前に切り分けられるかどうかが、プロジェクトの成否を左右します。
導入前分析がプロジェクトのROIを左右する
分析を省くと「隠れコスト」が膨らむ
「まず導入して動かしてみたほうが早いのでは」と思われるかもしれません。しかし、事前分析を省略したプロジェクトでは、以下のような「隠れコスト」が発生しがちです。
- 対象業務の選定ミスによるやり直し:自動化効果が低い業務に導入してしまい、別の業務で再チャレンジすることになる。
- 例外対応の追加開発:想定外の例外パターンが次々と見つかり、その都度カスタマイズが必要になる。
- 現場の信頼低下:期待通りに動かないAIに対し「やっぱりAIは使えない」という評価が広がり、次の施策への協力が得にくくなる。
導入前分析は「保険」ではなく「投資」
プロセスマイニングによる導入前分析は、リスクを下げるだけでなく、投資対効果そのものを引き上げる行為です。適切な対象業務の選定で同じ投資額でも得られる効果が大きくなり、例外パターンの事前把握でAIエージェントの設計精度が高まります。そして、導入前のベースラインを数値で記録しておくことで、導入後の効果を明確に証明でき、次の投資判断(→子ページ③)にもつなげられます。
まとめ
導入前の業務分析は、AIエージェントの投資対効果を左右する最も重要なステップです。プロセスマイニングでデータに基づく優先順位づけと例外パターンの事前把握を行うことで、「成果が出る導入」を実現できます。
NADJAでは、自社ツールを用いた業務分析とAIエージェント導入支援を一体で提供しています。「自社の業務をまず可視化してみたい」「どの業務から自動化すべきか相談したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は、プロセスマイニングとは?AIエージェント導入の成果を最大化する業務分析手法の全体像の子ページ②です。
▶ 関連記事:プロセスマイニングで業務の「見えないムダ」を可視化し、AIエージェントの導入ポイントを特定する(子ページ①)
▶ 関連記事:AIエージェント導入後の効果計測|プロセスマイニングで改善インパクトを数値で証明する(子ページ③)
▶ 関連記事:DX推進を加速させるプロセスマイニング×AIエージェントの相乗効果(子ページ④)